2012年5月17日木曜日

【意見陳述・第3章】環境保全の市民の声を受けた市長としての行動は背信行為とはいえず、求償の適用はありえない

平成23年(ワ)第40981号 損害賠償請求事件
原告 国立市
被告 上原公子

意見陳述要旨
                   2012年5月17日
                   被告訴訟代理人弁護士 齊藤園生
東京地方裁判所民事第2部 御中


1 国賠法1条2項による求償の問題については、被告準備書面(1)89頁以下に述べています。

2 訴状および住民訴訟判決(甲1の1)の論理は、被告の第1から第4までの行為を違法とした上で、違法と評価できる基礎事実を被告は認識していたのだから、少なくとも重過失があり、国賠法1条2項の求償が認められる、とするものです。
 この論理で考えるなら、首長は十分意味を認識しながら政策を実現していくのですから、その行為が国賠法1条1項で違法と評価されれば、ほとんどの場合2項が認められ、最終的には首長が責任を負うことになってしまいます。これでは首長の職責は果たせません。

3 国賠法1条2項の求償が認められる場合は限定して考えるべきです。
 現代の公務では結果として違法と評価される公務があることも不可避というべきで、公務の中には違法な公務も内在的に含んでいるというべきです。そのなかで2項による公務員への求償が認められるのは、公務員の個人的事情に起因するといえる場合、つまり自治体への背信行為がある場合に限定すべきです。2項の適用場面を限定する考えは、本年4月20日神戸市事件最高裁判決千葉裁判長補足意見でも示されているところです。
 被告の行為は、いずれも環境保全の市民の声を受け、市長としてその声を実現していった行動であり、何ら背信行為とはいえず、本件では2項の適用はないというべきです。
 本訴訟では、国賠法1条の趣旨に立ち戻って2項の適用について、根本的に問いなおされるべきと考えます。

0 件のコメント:

コメントを投稿